翼宿のショート・ショート(ふしぎ遊戯)
またまた、『ふしぎ遊戯』関係で懐かしいものを発掘。
なんと、10年以上前にニフティの某会議室のアップしたショート・ショートが見つかりました。
若気の至りで、もはや恥ずかしくて正視できませんが(笑)、せっかくだし、記念に貼り付けておくか(笑)。
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そうそう、以前設置したweb拍手絵は、朱雀七星士のもので、計7枚あります。
が、管理人の偏愛のために2枚ある人がいるので、かわいそうに、ひとりだけ登場しません。ごめんよ>○宿。
ということで、ここからショート・ショート本体
「そりゃあ!でえぇーい!」 紅南国勵閣山中には,近辺のものから恐れられている山賊の集落がある。 山賊といえども,その頭を中心に指揮系統はしっかりと行き届いており, 小さな軍にも相当するほどの力を有しているため,役人もうかつには手が だせないでいる。 もっとも,頭の人柄のためか,それほど大がかりな略奪が行われるわけで もなく,時折旅人などから「通行料」を巻き上げる程度で,滅多に人の命を 奪うようなこともないので,今のところは私的な「関所」として黙認されて いる状態である。 山賊の頭目がいる館は,周囲が頑丈な柵で囲われ,矛を持った手下が見張 りに立っており,ちょっとした砦といったところである。 その中庭で,今,まだ若い男が,なにやら重そうな得物を一心に振り回し ているところであった。朱みがかった髪の毛は少し逆立ち,汗の浮かんだ顔 は幼さを残しながらも,その二つ名通り野生の狼的な趣を備えている。 その男の名は侯俊宇(こうしゅんう),通称を幻狼という。 「どや,幻狼。少しはこつが掴めたか?」 「あ,頭。いやぁ,まだあかんわ。もうちょっとみたいな気はしとるねんけ ど」 幻狼に声をかけた男は,この館の主人でもある,山賊の頭であった。 すでに初老の域に差し掛かり,髪にも白いものがまざってはいるものの, その鋭い眼光とたくましい体つきはやはり頭と呼ばれるにふさわしいもので あった。幻狼が心から尊敬している人物である。 「そうか,ま,あせらず気楽にせぇや。まだまだわしかてくたばる歳やない し,お前がその鉄扇を自由に使えるようになったからいうて,すぐに頭の 座を譲るほどお人好しでもないで。覚悟しときや」 頭はそう言うと豪快な笑い声を上げた。 彼は,ある日突然幻狼が自分のところへ転がり込んできたときに,人目み て気に入り,以来ずっと自分の手元に置いて面倒を見てやってきたのであっ た。その『面倒』の見方はさすがに山賊ともいうべきもので,かなり手荒な ものではあったが,しかし彼にとっては幻狼は自分の息子も同然である。 もちろん,幻狼もそのことを恩義に感じている。 頭から教えてもらった鉄扇の使い方を早く覚えたいと,毎日練習をかかさ ぬのも,それをすることが少しでも恩返しになればという気持ちからでもあ った。 まもなく頭は館へと戻り,幻狼はまた鉄扇を振りはじめた。 「幻狼さん!」 再びかかった声に振り向くと,そこには同じように頭にみこまれ,共に暮 らしてきた山賊仲間達がいた。 今声をかけたのはそのなかでもっとも若い,12歳の少年であった。名前 を漣黄(れんこう)という。幼い頃母親を亡くし,また昨年父親もなくして 身寄りのなくなった彼は,あてどもなく歩いている所を頭に拾われたのだっ た。 まだ山賊の仲間になって日も浅い彼は,その風貌とは裏腹に意外と面倒見 がよい幻狼に特に懐いている。 「特訓ですか,でもその鉄扇ってすごく重いんでしょ?」 「ああそうや。どや,一度持ってみるか?」 幻狼はひょい,っといった感じで鉄扇を漣黄に手渡したのだが,漣黄は支 えきれずによろめいてしまう。確かにこれはただ振り回すだけでも一苦労な のである。ましてや…… 「頭みたいに使うにはまだまだやな。俺がいくら振っても火ィはちょろっと もでやせん」 この鉄扇は特殊な力を持っており,念を込めてふれば『烈火神焔』とよば れる,獲物だけを焼き尽くす炎を出すことができる。しかし,それが出来る のは今のところ頭しかいない。 「せやけど,お前はこれが使えるようになるって頭に見込まれた男や。すぐ に炎も出るようになるやろ」 そういったのは,幻狼より二歳年上ではあるが,まったく対等に,本当の 兄弟のようにしてきた親友である功児であった。 彼は幻狼の男気に惚れ込んでおり,本来の頭候補と言われていながら,年 下の幻狼にその座を譲ったのである。 「ねぇねぇ,幻狼さんはどうして山賊になったの?」 倒れかけたところを幻狼に支えてもらいながら,漣黄が尋ねた。 「そやな,ここの頭の人柄やな。山賊とはいっても一本筋の通ったところが あって,なにより情に篤い。そんな頭にあこがれて裸一貫で転がり込んで きたんや」 「なに格好つけとんや。単に家でこき使われるのが嫌で家出してきたんやな かったか?」 「う,うるさい,だまっとれ,功児!」 幻狼は思わず功児の頭をなぐりつけた。 「よぉ『翼宿』毎日ご苦労やな」 そんなところへ,耳障りな声が聞えてきた。見ると,太った,猪のような 脂ぎった顔で,にやにや笑っている男がいた。男の名は睿俔。腕っ節は強く それだけなら頭候補になっても不思議ではないほどだが,いかんせんまわり からは鼻つまみ者扱いされていた。 「なんの用や,睿俔。俺のことそう呼ぶなていうとるやろ」 幻狼は鋭い目つきで睿俔をにらみつけたが睿俔はまるでこたえていない。 「別に用なんてないわ。まぁせいぜい頑張りや,『翼宿』」 再び幻狼のことをそう呼ぶと,そのまま立ち去っていった。 「気にするなや。あいつ,次の頭に自分が選ばれへんかったいうて逆恨みし とるだけや」 功児がそう言ってとりなすが,幻狼はまだ睿俔が立ち去ったほうをにらみ つけたままだった。 『翼宿』……そう,幻狼にはもう一つの名前があった。しかし,彼はこの 名を嫌っていた。 彼は幼い頃から,感情が高ぶったりすると,右腕に『翼』という字が赤く 浮かび上がり,同時に普通では考えられないほどの力が出て驚くことがあっ た。 一度,頭の前で字が浮かび上がったとき,彼はこういった。 『幻狼,お前,宿星をもっとるな』 『宿星?』 『わしが聞いた伝説では,この紅南国が乱れるとき”朱雀の巫女”いう女が 現れるんや。その女が現れたときには”七星”いう連中が集まってそいつ を護るんやそうや。”七星”は身体のどっかに字ぃもっとるんやと』 『ほいたら,俺はその七星かい?』 『そや。字が”翼”やさかい,さしずめ”翼宿”ってとこか」 『あほらしい,俺は俺や。なにが”翼宿”や,頭も冗談きついわ。大体,俺 が女を護るみたいな殊勝なことやりまっかいな。二度とそんな呼び方せん といて下さい』 幻狼はそのときはそう笑い飛ばしたのであった。 このときそばで聞いていた何人かはその『翼宿』という呼び方を知ってお り,とくに睿俔は彼がその名を嫌っていることを知っていて,わざとそう呼 んでいるのであった。 「なにが宿星や。俺はずっとここにおってみんなと楽しくやってくんじゃ」 幻狼はこう呟き,また鉄扇の特訓へと戻っていった。 ================================== ================================== ある夜のこと,急に頭に呼び出された幻狼が行ってみると,普段は滅多に (終わり) |
2006/02/18(土) 07:32 | 固定リンク
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