文字で読む高座
最近、会社の行き帰りに読んでいた文庫は、たまたま2冊続けて落語家の方の作品でした。
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桂 枝雀
『桂枝雀のらくご案内―枝雀と61人の仲間』
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古今亭 志ん朝, 齋藤 明
『志ん朝の風流入門』
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前者は、枝雀さんが当時(昭和59年(1984年)頃)持ちネタとされていた大阪落語60“人”(+次点としていくつかをまとめて1“人”分)をお題にして、それらのちょっとした解説やご自身の身の回りの関連話などを綴られた落語のガイドブック兼エッセイ集、です。
61“人”はそれぞれが章立てされており、各々前半が落語の粗筋、後半に随筆、という構成です。
私は実は落語を聞いたことは有りません。が、それでもネタとしては結構知っているものも多かったです(小さい頃読んだ吉四六話とかで出て来たものも)。
ただ、やっぱりこういうものは、実際に高座を聴いてこそ味があるものなんでしょうね。ただ粗筋をなぞるだけだと、それ程面白いとは思いません。
『酔っ払いのお手軽な演じ方』とか。
61“人”はそれぞれが章立てされており、各々前半が落語の粗筋、後半に随筆、という構成です。
短い時間を利用してちょっとずつ読み進めるにはうってつけですね(笑)。
落語の粗筋はほんとうに“あらすじ”だけ、といった感じ。私は実は落語を聞いたことは有りません。が、それでもネタとしては結構知っているものも多かったです(小さい頃読んだ吉四六話とかで出て来たものも)。
ただ、やっぱりこういうものは、実際に高座を聴いてこそ味があるものなんでしょうね。ただ粗筋をなぞるだけだと、それ程面白いとは思いません。
中高時代に読んだ小林信彦の『超人探偵』だったかに、主人公・神野推理が書くコントを評して「読んだだけでは面白くない、それが彼のコントの特徴である……熟練の役者の手にかかると抱腹絶倒のものとなるのだ」みたいな表現がありましたけど、これ、結構一般に言えるような気がします。
お芝居や映画のシナリオも、それを読んだだけだとさほど面白いとは思えないのに、いざ上演・上映されてみると報復絶倒、って経験、ありません?
もっとも、同じようにト書き形式で読み進んでいくTRPGのリプレイはその形式でこそ面白い、というのがあるので、面白さというものにも様々なスタイルがあるのだなぁ、と。
一方で、エッセイとして読むなら、落語家の舞台裏なんかも垣間見えて、なかなか面白いです。お芝居や映画のシナリオも、それを読んだだけだとさほど面白いとは思えないのに、いざ上演・上映されてみると報復絶倒、って経験、ありません?
もっとも、同じようにト書き形式で読み進んでいくTRPGのリプレイはその形式でこそ面白い、というのがあるので、面白さというものにも様々なスタイルがあるのだなぁ、と。
『酔っ払いのお手軽な演じ方』とか。
まず第一に、ロレツがまわらなくなる。
第二に、ものがはっきり見られなくなるので、その分だけ逆に一点を時々ジーッと見つめようとする。
第三に、自分の体の力が脱けていくわけですから、重力に従って姿勢が低くなっていく。
以上の三点に留意されますと、あなたも酔っぱらいになれます。……
こういう芸をされる方というのは、人間をよ~く観察されていないとなかなかうまくはいかないのだなぁ、というのが実感できます。
後者の方は、逆に、話題として『落語』が出てくることはほとんどありません。
『風流入門』(もとは日本語高座)とあるとおり、春から始まって四季折々の風物を、味のある“日本語”と“邦楽”を交えて描写していく、といった趣向のものです。
『風流入門』(もとは日本語高座)とあるとおり、春から始まって四季折々の風物を、味のある“日本語”と“邦楽”を交えて描写していく、といった趣向のものです。
落語話を期待している人には肩透かし……と思いきや。これが大変面白く、お勧めの一冊です。
語り口も『~しますってぇと』『~ですな。』といった感じで、軽妙に綴られておりますし、さすがは言の葉が命の職業なだけあって、ついつい引き込まれて読み進めてしまいます。
語り口も『~しますってぇと』『~ですな。』といった感じで、軽妙に綴られておりますし、さすがは言の葉が命の職業なだけあって、ついつい引き込まれて読み進めてしまいます。
ただ悔しいことに、語彙の貧困な私、読めない単語が結構ありまして……通勤中に読んでいたものですから、辞書を引くことも出来ず。普段、如何にふりがなを重宝しているか、ということですな(苦笑)。
『入門』と名がついているだけに、実は蘊蓄本の性格を持っています。四季折々の言葉に解説がついているわけですね。
でも、人が蘊蓄を語るときには、そこはかとなく得意げな感じが漂っているものですが、独特の語り口により中和され、巧みにシャレや小話等をはさみ込むことで、嫌みに聞こえないところも好感が持てます。
でも、人が蘊蓄を語るときには、そこはかとなく得意げな感じが漂っているものですが、独特の語り口により中和され、巧みにシャレや小話等をはさみ込むことで、嫌みに聞こえないところも好感が持てます。
皺がよっては若水にならないねぇ、絶妙ではありませんか。
若水とは、正月早々に汲む井戸水や川水なんかのことですな。……ただ、若水を汲むには、微妙なタイミングがあった。
手広く商いをやっている店の番頭さん。年男になったので……丁稚の芳どんに手桶を持たせて、清らかな流れにやって来た。……ややあって、吹いていた風がおさまったと見るや、手桶でさっとばかり川水をすくいあげた。
「ねえ、番頭さん、どうして川の風が止むまで待っていたんです?」
「川風が吹いていると、川に皺が寄っているだろう。皺の寄った水は、な、若水にはならねぇんだよ」
この本、巻末に索引がついているので、これをざっとみて気になる言葉があったら、そのページをすぐ開くことが出来るのもよいところ。
目についたところから読むもよし。
また、全部読み終えた後も、気が向いたら気紛れに頁を繰ってみると、また違った味わいがあるかも知れません。
落語家
目についたところから読むもよし。
また、全部読み終えた後も、気が向いたら気紛れに頁を繰ってみると、また違った味わいがあるかも知れません。
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