薔薇と香りと三円硬貨
「これ、なんだと思う?」
そう問われたら、人は困惑しながらも、
「えっと、、、まず、薔薇だろ。それから、木屑。それと、、、一円玉?」
と答えるだろう。
確かに、それで間違いはない。間違いは無いが…これらは全て、今夜貰った『誕生日プレゼント』なんだな、これが。
そう問われたら、人は困惑しながらも、
「えっと、、、まず、薔薇だろ。それから、木屑。それと、、、一円玉?」
と答えるだろう。
確かに、それで間違いはない。間違いは無いが…これらは全て、今夜貰った『誕生日プレゼント』なんだな、これが。
はじまりは、一軒のお好み焼き屋。
普通に晩飯を摂ろうと入ったそこで、お客の二人と店の主人の、
「あら、ここ、ワインなんて置いてあるの?」
「ああ、自分の趣味で、気に入ったのを置いているだけなんですが。」
「じゃあ、今度、みなで来た時に頼もうかしら」
そんなような会話を小耳に挿んだのが、そもそものきっかけだった。
普通に晩飯を摂ろうと入ったそこで、お客の二人と店の主人の、
「あら、ここ、ワインなんて置いてあるの?」
「ああ、自分の趣味で、気に入ったのを置いているだけなんですが。」
「じゃあ、今度、みなで来た時に頼もうかしら」
そんなような会話を小耳に挿んだのが、そもそものきっかけだった。
遠慮がちに、店の主人に話しかけてみる。
「あの、ここ、ワイン置いてあるんですか。おいしいですか?」
「ええ、自分の気に入ったものなんですが…」
「じゃあ、、、今日、誕生日なんで、ちょっと頼んでみようかな。そのボトル、1本下さい」
「赤?白?」
「えーと、赤で」
そのとき、店内には少し離れたところに二人並んだ女性客、私の右側に女性一人、左側に男性一人。
なぜか、私が『誕生日』という言葉をつむいだ瞬間、離れた女性客の一人と、右隣の女性客が、それぞれ、『ちょっと』…と言って、席を立つ。
「あの、ここ、ワイン置いてあるんですか。おいしいですか?」
「ええ、自分の気に入ったものなんですが…」
「じゃあ、、、今日、誕生日なんで、ちょっと頼んでみようかな。そのボトル、1本下さい」
「赤?白?」
「えーと、赤で」
そのとき、店内には少し離れたところに二人並んだ女性客、私の右側に女性一人、左側に男性一人。
なぜか、私が『誕生日』という言葉をつむいだ瞬間、離れた女性客の一人と、右隣の女性客が、それぞれ、『ちょっと』…と言って、席を立つ。
しばらくして、一足先に戻ってきた、離れたところにいた女性客からは、一輪の薔薇の花が私に差し出された。
「誕生日ということだし、どうぞ」
恐縮しながら、受け取る私。花なんぞプレゼントされるなんてのは、いつ以来だろう?
「誕生日ということだし、どうぞ」
恐縮しながら、受け取る私。花なんぞプレゼントされるなんてのは、いつ以来だろう?
女性は花をプレゼントされるとうれしいというが、男性だって思いがけなさと相まって、嬉しいものだと、隣の男性と話していたりした。
その後、しばらくして、右隣の女性客が戻ってきた。
見ると、アルミホイルに包んだキノコが二かたまり程。
田舎からのもので、本来は明日来る友人に振る舞うはずであったものを、一部持ってきて下さったらしい。
日にちが経っているといいながら、火にかける前にすでに、ちょっと離れていてもいい香りがしている。
実はキノコがどちらかといえば苦手な私にも、心地よく感じる香り。
そのまま、店の鉄板でホイル焼きにして、ポン酢を用意してもらって食べたそれのうまいことっ!
隣の男性と分け合って食べたのだが、ホイル焼きの一かたまりの半分以上は自分が食べていた気がする。
『さまつ』というキノコで、松茸よりも少し早く生えるが、香りや食感は似ているのだとか。
見ると、アルミホイルに包んだキノコが二かたまり程。
田舎からのもので、本来は明日来る友人に振る舞うはずであったものを、一部持ってきて下さったらしい。
日にちが経っているといいながら、火にかける前にすでに、ちょっと離れていてもいい香りがしている。
実はキノコがどちらかといえば苦手な私にも、心地よく感じる香り。
そのまま、店の鉄板でホイル焼きにして、ポン酢を用意してもらって食べたそれのうまいことっ!
隣の男性と分け合って食べたのだが、ホイル焼きの一かたまりの半分以上は自分が食べていた気がする。
『さまつ』というキノコで、松茸よりも少し早く生えるが、香りや食感は似ているのだとか。
さらに、その女性からは、屋久島のものだという、屋久杉のポプリまでいただく。
かなり日が経っているというが、微かに香っている。
「屋久島で買った箸を使っているけれど、未だに香りがするよ。」といっていたから、屋久杉の香りは長く続く物なのかもしれない。
それにしても屋久島か…遠い昔、卒業旅行で行きそこねた経験のある私は、思わず大声で「行きたかったのに、行けなくて、すごく悔しい思いをしたんですよ~。」と大声で嘆いていた気がする……せまい店内で恥ずかしいことだ。
かなり日が経っているというが、微かに香っている。
「屋久島で買った箸を使っているけれど、未だに香りがするよ。」といっていたから、屋久杉の香りは長く続く物なのかもしれない。
それにしても屋久島か…遠い昔、卒業旅行で行きそこねた経験のある私は、思わず大声で「行きたかったのに、行けなくて、すごく悔しい思いをしたんですよ~。」と大声で嘆いていた気がする……せまい店内で恥ずかしいことだ。
左隣の男性からは(その方は、その店に初めて来た方らしいが)、
「こんな誕生日は、なかなか経験出来ないよ、見知った人じゃないんだろう」という言葉。
確かに、店のご夫婦(だろう)方々以外は、多分、初対面。
見ず知らずの人々から祝ってもらえるというのは、なかなか出来ない経験である。
件の男性は、それを作っているところを見ていたらしいが、私は未だ見ていない。
「こんな誕生日は、なかなか経験出来ないよ、見知った人じゃないんだろう」という言葉。
確かに、店のご夫婦(だろう)方々以外は、多分、初対面。
見ず知らずの人々から祝ってもらえるというのは、なかなか出来ない経験である。
学生時代、誕生日の前後に行くと、店内を暗くして『ハッピバスデートゥーユー』と歌いながら料理を運んでくれたり写真を撮ったりしてくれる店があったが、あれはそういうイベントがあるとわかってのことだったしね。
あ、ちなみに、このお好み焼き屋、『タウリン』とか、謎のメニューがいくつかあったりする。件の男性は、それを作っているところを見ていたらしいが、私は未だ見ていない。
大体において、一旦店を決めてしまうと定番メニューしか頼まないので、他のメニューがどんなものかの知識に乏しい私。今日も基本は豚モダン+ホタテのバター焼き+生ビール+ワイン+麦焼酎のお湯割・レモン絞り+エスプレッソだし。
他にも幾つか謎のメニューがあるので、それは今後の楽しみにしようと、あえて店主には尋ねない、ということでお互い合意して別れた。
お店からは、一切れのバースデーケーキまでいただいてしまった…あれ、どこから出てきたのだろう(少なくとも、メニューにはなかったはず…)。
ちなみに、私は頼んだワイン(銘柄は失念したが、確かスペイン産)を一口ずつ、かの4人に配ったのであったが(まぁ、右隣の女性には半分くらい飲まれた気もしなくもないが)、そんなことでは到底釣り合うまい。
人生、こういう誕生日もあるんだなぁ、と、『みんな、それぞれ少しずつ気を遣ったかもしれないけれど、それ以上に楽しんだんだから、よかったんだよ』と、だれかに言われた言葉を反芻しながら、今宵起こった奇妙で楽しい出来事に感謝しつつ、家路についたのだった。
人生、こういう誕生日もあるんだなぁ、と、『みんな、それぞれ少しずつ気を遣ったかもしれないけれど、それ以上に楽しんだんだから、よかったんだよ』と、だれかに言われた言葉を反芻しながら、今宵起こった奇妙で楽しい出来事に感謝しつつ、家路についたのだった。
あ、そうそう、三円硬貨の解説がまだだった。
あれは、隣の女性が一円硬貨をいくつか手に広げているのを見て、「そういえば、一円硬貨って一枚作るのに実費で二円程かかるんですよね」と私が言ったのがきっかけ。
その時点で、その女性にとっては、一円硬貨=三円分の価値のあるもの、になったらしい。
なんだか、2ドルのパンを閉店間際に1ドル50セントで買い、その後返品して『返品したパンを1ドル50セントで引き取ってもらった分と、先程払った1ドル50セントで、合計3ドルだよね」と、4ドルを3ドルに値下げしたパンをもらった、みたいな話を思い出したりもしたが(なんでだ)、もはやいい気分に酔っていた私は、理路整然と説明することもなく、彼女が言うところの『3円分』の価値のある1円硬貨を、お土産に貰ったのであった。
あれは、隣の女性が一円硬貨をいくつか手に広げているのを見て、「そういえば、一円硬貨って一枚作るのに実費で二円程かかるんですよね」と私が言ったのがきっかけ。
その時点で、その女性にとっては、一円硬貨=三円分の価値のあるもの、になったらしい。
なんだか、2ドルのパンを閉店間際に1ドル50セントで買い、その後返品して『返品したパンを1ドル50セントで引き取ってもらった分と、先程払った1ドル50セントで、合計3ドルだよね」と、4ドルを3ドルに値下げしたパンをもらった、みたいな話を思い出したりもしたが(なんでだ)、もはやいい気分に酔っていた私は、理路整然と説明することもなく、彼女が言うところの『3円分』の価値のある1円硬貨を、お土産に貰ったのであった。
ところで、夜中に書いたラブレターは非常に恥ずかしいというが、酔っぱらって夜中に書いた日記はどれくらい恥ずかしいものなのだろう…でも、これは、件の男性に『こんな記念日は、是非日記に残しておかないと』と言われたものでもあるので、例え後日身もだえたとしても、消すに消せないにであった……。
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コメント
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数時間遅れましたがお誕生日おめでとうございます。
投稿: munou | 2010/11/02 01:33
いやー、いい話だなー
さっそくEvernoteに保存、保存、と。_φ(・_・
投稿: facet | 2010/11/02 02:06
わざわざこちらまで、どうもありがとうございました。
投稿: 風柳>munou さん | 2010/11/02 07:25
まったく見ず知らずの方々だけに誕生日を祝ってもらえるという、貴重な体験でした。
ところで、Evernoteってよく知らないんですが、
http://www.evernote.com/about/intl/jp/premium/
これ?良いものですか?
投稿: 風柳>facet さん | 2010/11/02 07:31
本文と全く関係なくなっちゃいますけと(^^;;、evernote、個人的には、画像を放り込んでおくだけで検索できるのが特に気に入ってます。
たとえば、街で気になるコンサートのボスターを撮って放り込んでおけば、いつからだっけ?と後で文字から検索できたりもしますし。
これで日本語OCRの精度とiPhoneアプリの重さが改善されたら無敵じゃないかと思うぐらいですね。
Macだとコンピュータ内検索でもヒットするので、それも重宝してます。
もちろん、いろいろ不満もありますけど、結構いい線行ってると思いますよ。
投稿: facet | 2010/11/03 03:52
ありがとうございます……と、続きはTwitterで、とか(笑)。
http://twitter.com/furyutei/status/29543580950
話題がずれたときとかTwitterに誘導、というのもいいんじゃないかと勝手に思ってるんですけれど、相手のscreen_nameがわからないとなぁ……と、ここはココログだった。ココログ広場に誘え、って怒られそうだ(笑)。
投稿: 風柳>facet さん | 2010/11/03 14:34