鍛高譚 ~ カレイにまつわる物語
「鍛高譚(たんたかたん)」という焼酎、出張先等で何度か飲んだことがあり、名前の響きが面白くてなんとなく記憶の片隅に残っていたものの、その由来までは考えたことが無かった。
当時、ワーグナーの結婚行進曲と何か関係があるのかな……とか思ったのは内緒(汗)。でも、名付け方からすると、語呂合わせの意味もあるみたいなので、きっと命名者の頭にもかすめていたのではないかとも思う。
それが本日、
「たんたかたん」の瓶にカレイがいるので何だろうと調べてみると、鍛高譚とは譚の字の通りタンタカの物語という意味なのでした。その昔タンタカというカレイが海の濁りに病んだ魚たちを救うために薬草の紫蘇を求めて旅し、山の動物たちの助けにより手に入れて帰ってきたというお話。いいカレイです pic.twitter.com/jVHV9mQ6sY
— 長嶋祐成 (@kuroNYU) 2018年5月24日
というツイートを見かけ、ちょっと調べてみたところ
「鍛高(タンタカ)」とは、アイヌ語でカレイ科の魚のこと。実は鍛高譚のラベルのイラストに描かれている「タンタカ」には物語があります。「タンタカ」が活躍する物語、「鍛高譚(たんたかたん)=タンタカの物語」をお楽しみください。
鍛高譚とは|オエノングループ
ということで、鍛高譚→タンタカ・譚→カレイ物語だということが判明。
https://t.co/PSfJqeOyl8https://t.co/G7i1QpE3Cy
— 風柳 (@furyutei) 2018年5月25日
・タンタカ:アイヌ語でカレイの意
・鍛高譚=タンタカ物語(「タンタカ」が活躍する物語)→カレイ物語
だったのか、なるほど。
なるほどーと感心したのだけれど、その「鍛高譚 タンタカ物語」の中に、気になる箇所が。
すると長老の海亀がやって来て言いました。
鍛高譚とは|オエノングループ
「あの山の麓にどんな苦しみもいやしてくれる紫の
草がある。私達は、川では生きていけないがお前なら
大丈夫。みんなのために行ってその葉をとって来て
おくれ」そう言ってはるか遠くにぽこんと頭を出して
いる山をさしました。タンタカは、勇気を出して川をさか
のぼりました。
焼酎の「鍛高譚」に使われる紫蘇(しそ)は、北海道の白糠郡白糠町の鍛高地区で栽培されており、「鍛高山」という山もある。
つまり、物語のタンタカは、茶路川を遡って、鍛高山を目指したことになる。
『え……カレイって、淡水でも大丈夫なの⁉』
それでさらに調べたところ、どうやらヌマガレイやイシガレイ等、汽水や淡水にも侵入するカレイも存在するらしい。
物語としての鍛高譚がいつ頃成立したのかは不明だが、普通は海に住むカレイが川にいることから、山の麓の紫蘇を取りに来たのでは、という連想に至ったのか?などと想像するのも面白い。
なお、現在は「タンタカ」というと「マツカワガレイ」を指すことが多いらしい。
ただ、マツカワガレイは完全な海水魚のようなので、(物語になるほどにいつも)川を何キロも遡ったところで見られた、というのはちょっと考えにくい気がするので、やはり物語のタンタカはヌマガレイ(もしくはイシガレイ)を指すのではないか、と思う。
蛇足だが、ヌマガレイは「左ヒラメに右カレイ」の法則にはあてはまらない(腹を手前にしたときに、目が左側にある)カレイなのだとか。
『だとすると、鍛高譚のイラストでヌマガレイかどうかわかるかも?』と期待したのだが、目が右に書かれたイラストも、左に書かれたイラストも両方存在するため、確定することはできなかった。残念!
追記
続・白糠のアイヌ語地名「茶路川筋のアイヌ語地名」
「カレイがここまで遡った」という伝説があるのは確かなのか。『タカノハ鰈』はマツカワの別称だよね。海水魚なのに淡水の川をここまで遡るなんてことが実際にあったのだろうか。
白糠町に実際に伝わる民話ですが、タンタカ山からカレイの化石が見つ かったこともあって、かつてはこの付近まで茶路川をのぼってきていたの ではないかとされています。
タンタカタ~ン!白糠発祥の焼酎! – 北海道ファンマガジン [ファンマガ]
おお、カレイの化石が見つかっているのか。いつ頃のものなのだろうか。軽く検索しても出てこないなぁ……。
ただ、この辺りは3500万~4000万年前頃には海の底だったらしいので、その頃の化石だとすると、普通の海にすむカレイかもしれないのか。